売れない…を解決するセールスにプロスペクト理論を使う方法

商品やサービスを売る際、購入者の心理を理解することは非常に重要です。

特に、プロスペクト理論という心理学の理論を理解し、それをセールスに活用することで、より効果的な販売戦略を立てることが可能になります。

この記事では、プロスペクト理論とは何か、そしてそれがセールスとどのような関係性を持つのか、そしてそれを活用する具体的な方法について詳しく説明します。

プロスペクト理論とセールスとの関係性

プロスペクト理論ってなに?

プロスペクト理論は、人々がリスクをどのように評価し、意思決定を行うかを説明する心理学の理論です。

セールスの分野では、この理論を利用して、顧客の購買行動を理解し、効果的な販売戦略を立てることができます。

プロスペクト理論に基づくセールスアプローチは、顧客が損失を避けるためにどのように行動するか、また、利益を得るためにどのように行動するかを考慮に入れ、それをセールスプロセスに組み込むことが重要です。

プロスペクト理論とは何か?

プロスペクト理論は、ダニエル・カーネマンとアモス・トベルスキーによって提唱された理論で、経済学や心理学で広く受け入れられています。

この理論は、人々が確実性よりも可能性を重視し、損失を避けるためにリスクを取る傾向があることを示しています

つまり、人々は同じ価値の損失を避けるために、得ることができる利益よりも多くのリスクを取ることが多いのです。

日常の出来事とプロスペクト理論

日常生活において、私たちはしばしばプロスペクト理論の原則に基づいて行動しています。

例えば、セールで「今だけ!50%オフ!」という広告を見たとき、多くの人は損失を感じることなく、その機会を逃すことを避けるために購入を決断します。

これは、プロスペクト理論が示す「損失回避」の一例です。また、保険に加入することも、将来の潜在的な損失に対する保護として、リスクを回避する行動と言えます。

また、本当は一緒にいても楽しくない人と付き合いを続けるのも、寂しさという損失を回避するためです。

さらに、人から変な目で見られることを恐れて合理的な行動がとれないのも、社会的な損失を避けるための行動と解釈できます。

セールスに使われるプロスペクト理論の事例

セールスにおいてプロスペクト理論を活用する事例は数多くあります。例えば、限定品を販売する際に「数量限定、売り切れごめん!」とアピールすることで、顧客に損失回避の感情を刺激し、購買意欲を高めることができます。

また、顧客が製品やサービスを購入する際に、「この製品を購入しなければ、あなたは大きなチャンスを逃すことになります」というメッセージを伝えることで、損失回避の動機を利用してセールスを促進することが可能です。

さらに、割引券を使うことで、本来必要ではない商品を購入してしまう行動も、プロスペクト理論の観点から説明することができます。

割引券を使うことで得られる「お得感」は、実際には必要のない商品を購入することによる損失を相殺すると感じさせます。

同様に、消費税が上がる前に商品を購入する行動も、将来の損失(税金の増加)を避けるためのものです。

お客さんは失敗・損をしたくない

お客さんの心理を利用した戦略って?

人間は本能的にリスクを避け、安全を求める生き物です。

特にお金に関する決断においては、失敗や損失を避けたいという強い願望が働きます。これはセールスの世界でも同じで、お客さんは自分の選択が最善であると確信したいと思っています。

「無料で与えて、取り上げる」戦略の意識

「無料で与えて、取り上げる」という戦略は、お客さんに一度何かを体験させ、それを取り上げることで、その価値をより高く感じさせる方法です。

例えば、無料サンプルやトライアル期間を提供し、その後で有料化することで、お客さんは無料で得た利益を失うことを嫌がり、製品やサービスを購入する可能性が高まります

これは損失回避の原理を利用した心理的なアプローチです。

安心・安定はよりよい新規商品より価値が高い

新しい商品やサービスが市場に出ると、消費者はしばしば興味を示しますが、実際に購入に至るかどうかは別の問題です。

多くの場合、消費者は既知の製品やサービスの安心感や安定性を新規商品の魅力よりも重視します。これは、未知のものに対する不安や、既存のものに対する信頼から来るものです。

高くてもブランド物や大手企業の商品を購入するもの、本来の価値を比較しているのではなく安心・安全を優先して失敗したくない心理を利用しています。

不便な水準に戻すなら現状維持を選びがち

人間は自身が一度手に入れた快適さや利便性を失うことを非常に嫌います。これは人間の心理的な特性の一部であり、それは私たちが新しい生活スタイルや製品、サービスに慣れ親しんでしまうと、それを手放すのが難しくなるという現象を説明しています。人間の心は、一度慣れ親しんだ生活のパターンから離れることを極力避けようとします。

これは、商品やサービスが「お試し期間」を提供する際の成功の秘訣でもあります。消費者が一度その商品やサービスの利便性を体験し、それが日常生活の一部となると、お試し期間が終了してもその商品やサービスを続けて利用したいと思うのは自然な反応です。

一度利便性を経験し、それが日常生活に組み込まれると、その製品やサービスがなくなると感じる不便さや困難さを避けたいという人間の心理的な抵抗感から、消費者はお試し期間終了後にもその商品やサービスを続けて利用しようと思うのです。人間は、一度手に入れた利便性を失うことに対する強い抵抗感を持つことが多いのです。

プロスペクト理論を使ったセールスの優先度

効果的な販売戦略は?

プロスペクト理論は、人々がリスクを伴う選択をする際の行動経済学の理論です。

この理論は、人々が損失を避けるためにリスクを取る傾向があるという事実に基づいています。セールスにおいて、この理論を活用することで、顧客の購買行動を理解し、効果的な販売戦略を立てることができます。

優先度1:実際の商品のお試し期間をつくる

お試し期間を設けることは、顧客が商品をリスクなしで試すことができる絶好の機会を提供します。プロスペクト理論によれば、人々は損失を避けたいという強い動機を持っています。

無料のお試し期間は、顧客が損失のリスクを感じることなく、商品の価値を直接体験できるため、購入に向けた一歩となります。

優先度2:お客様の声で疑似体験をさせる

顧客の声をフィーチャーすることで、見込み客は他の人々が商品を使用して得た経験を疑似体験できます。

プロスペクト理論は、人々が他人の経験から学び、自分の選択を形成することを示唆しています。

実際の顧客の声を共有することで、見込み客は商品の利点をより具体的にイメージし、購入への抵抗を減らすことができます。

プロスペクト理論を活用できない課題と解決策

プロスペクト理論のデメリットはあるの?

プロスペクト理論は、人々がリスクをどのように知覚し、選択をするかを理解するのに役立つ心理学の理論です。この理論をセールスに応用することで、顧客の購買行動を予測し、売上を向上させることが可能になります。

しかし、この理論を活用するには、いくつかの課題が存在します。ここでは、それらの課題と、それに対する解決策を探っていきましょう。

課題:高いLTV(ライフタイムバリュー)が必要

高いLTVを持つ顧客は、長期にわたって企業に利益をもたらすため、非常に価値があります。

しかし、高いLTVを確保することは容易ではありません。

プロスペクト理論を活用したお試し期間を設けることは、顧客のLTVを高める一つの方法ですが、そのためには初期投資としての金銭的・人的コストが必要になります。

解決策1:商品を高額にする

商品の価格を高く設定することで、一人当たりの利益を増やし、高いLTVを達成することができます

価格を上げることで、顧客は商品の価値を高く感じる可能性があり、結果として長期的な関係を築くことができます。

解決策2:リピート性をもたせる

顧客が繰り返し購入することを促すことで、LTVを高めることができます

これには、定期購入サービスの提供や、リピート購入に対する特典の提供などが有効です。

顧客が継続して商品を購入することで、安定した収益を生み出し、LTVを向上させることが可能になります。

解決策3:商品ラインナップをつくる

多様な商品ラインナップを提供することで、顧客のニーズに合わせた選択肢を増やし、LTVを高めることができます。顧客が一度購入した後も、他の関連商品やサービスを購入することを促すことで、顧客のエンゲージメントを高め、長期的な関係を構築することができます。

まとめ

この記事では、プロスペクト理論という心理学の理論を理解し、それをセールスに活用する方法について詳しく説明しました

プロスペクト理論は人々がリスクをどのように評価し、意思決定を行うかを説明する理論で、この理論を活用することで、顧客の購買行動を理解し、効果的な販売戦略を立てることができます。

具体的な戦略としては、お試し期間を設ける、顧客の声を活用する、商品の価格を高く設定する、リピート購入を促す、商品ラインナップを拡大するなどがあります。

これらの戦略は、顧客の損失回避の感情を刺激し、購買意欲を高めるのに有効です