サロン経営で「集客」から改善してはいけない理由と正しい改善手順

サロン経営をしていて「もっとお客さんを増やしたい!」と思った時には、改善に着手すべき正しい順番があります。

実は、多くのサロン経営者が陥りがちなのが、この「改善の順番」を間違えてしまうことです。

改善の順番を間違えてしまうと、せっかく頑張っていても効率が悪く、なかなか成果が出ない…という辛い状態に陥ってしまいます。

あなたの貴重な時間と労力を無駄にしないためにも、効果的にサロン経営を改善するための「正しい順番」をぜひ知っておいてくださいね。

目次

サロン経営の改善は「売上の方程式」から理解する

サロンの売上を伸ばしたいと考えたとき、闇雲に行動するのではなく、まず売上がどのような要素で成り立っているのかを理解することが重要です。

サロンの売上は、主に以下の3つの要素の掛け算で構成されています。

売上 = 客数 × 顧客単価 × 来店頻度(リピート率)

この方程式を理解すると、売上を増やすためには「客数を増やす」「顧客単価を上げる」「来店頻度を上げる」のいずれか、あるいは複数の要素を改善すれば良いことがわかります。

そして、多くの人が真っ先に「客数を増やす」ことに飛びついてしまいますが、実はそれが遠回りになるケースが非常に多いのです。

なぜ「客数」の改善から始めるのがNGなのか?

かつての僕がサロン経営をしていた時の経験上、間違った順番で改善をしている時には、まず「客数」からテコ入れをしていました。

この時の僕の考えは「とにかく新しいお客さんがもっと来てくれさえすれば、売上はなんとかなるはずだ!」という単純なものでした。

しかし、今振り返ると、この考えこそが経営を苦しめていた原因だったと痛感しています。

これは、「穴の空いたバケツ」に水を注ぎ続けるのと同じ行為だからです。

コラム:新規顧客獲得とリピーター維持のコスト差

マーケティングの世界には「1:5の法則」という有名な法則があります。

これは、新規顧客を一人獲得するためには、既存顧客を一人維持するのに比べて5倍のコストがかかるというものです。

広告宣伝費や初回割引クーポンなど、新規顧客の獲得には多くの費用がかかります。まずはコストを抑えて関係を維持できる既存顧客を大切にすることが、経営安定の第一歩です。

バケツに空いた穴は「離脱してしまうリピート客」、そして新しく注ぐ水は「新規客」です。

バケツの穴を塞がないまま、いくら新しい水を注ぎ続けても、水はどんどん漏れ出てしまい、いつまで経ってもバケツは満杯になりません。

まずは穴、つまり「顧客の離脱」を防ぐこと。これが最優先課題なのです。

最初に改善すべきは「顧客単価」である3つの理由

実は、サロン経営で一番初めに改善すべきなのは「顧客単価」です。

これを聞いた時、最初は「お客さんを増やす方が先じゃないの?」と驚くかもしれません。

しかし、その理由を知れば「確かに!」と納得できるはずです。なぜ「顧客単価」から改善する必要があるのか、3つの具体的な理由を解説します。

理由①:利益率が向上し、経営が安定する

もし今、あなたが「お客さんを増やしたい」と焦っているなら、それは「新規客の獲得数 < リピート客の離脱数」という状況に陥っている可能性が高いです。

この状態で新規集客を頑張っても、次から次へとお客様が離脱していくため、常に新規客を探し続けなければならない「自転車操業」の状態になってしまいます。

コラム:LTV(顧客生涯価値)を高めよう

LTVとは「Life Time Value」の略で、一人の顧客があなたのサロンに生涯でどれだけのお金を使ってくれるかを示す指標です。

顧客単価やリピート率を高めることは、このLTVを高めることに直結します。LTVの高い優良顧客を育てることが、安定したサロン経営の鍵となります。

まずは既存顧客の離脱を防ぎ、リピート率を上げ、顧客単価を高めること。

これにより、新規集客をすればするほど、まるで穴を塞いだバケツに水が着実に溜まっていくように、安定した経営基盤を築くことができます。

理由②:集客に使えるコストが増え、有利になる

顧客単価の改善は、集客に使える「武器」を増やすことにも繋がります。

どういうことか、具体例で見てみましょう。

  • 改善前:一人のお客様が年間に使ってくれる金額が30,000円
  • 改善後:一人のお客様が年間に使ってくれる金額が50,000円

このように、一人のお客様から得られる年間の売上が上がると、そのお客様一人を獲得するためにかけられる広告費(CPA:顧客獲得単価)の上限も引き上げることができます。

例えば、経費を無視して単純に考えると、改善前は一人集客するのに40,000円の広告費をかけると10,000円の赤字でした。

しかし、改善後は同じ40,000円の広告費をかけても10,000円の黒字になります。当然、集客にお金をかけられる方が、広告出稿などで有利になるのは間違いありません。

理由③:顧客満足度の向上に繋がる

「顧客単価を上げる」と聞くと、単純な値上げをイメージしてしまい、お客様が離れてしまうのではないかと不安に思うかもしれません。

しかし、本来の顧客単価アップとは、お客様の悩みをより深く解決するための付加価値を提供することです。

例えば、カウンセリングを丁寧に行い、お客様が本当に必要としている高価格帯のトリートメントを提案する(アップセル)。あるいは、施術の効果を長持ちさせるためのホームケア商品を提案する(クロスセル)。

これらの提案は、お客様の「もっとキレイになりたい」という願いを叶えることに繋がり、結果として顧客満足度を大きく向上させるのです。満足度が高まれば、自然とリピートにも繋がるという好循環が生まれます。

具体的な顧客単価の改善手順【3ステップ】

では、具体的にどうやって顧客単価を改善していけば良いのでしょうか。ここでは、誰でも実践できる3つのステップで解説します。

ステップ1: 現状分析と課題の洗い出し

何よりもまず、自分のお店の現状を数字で正確に把握することから始めましょう。

感覚で経営するのではなく、以下の指標を算出して、どこに課題があるのかを明確にします。

  1. 平均顧客単価:売上 ÷ 総客数
  2. リピート率:特定期間のリピート客数 ÷ 総客数
  3. メニュー・商品別の売上構成:どのメニューがどれだけ売れているか

これらの数値を管理するには、高機能なPOSレジや、リクルートが提供するSalon Board(サロンボード)のような予約システムのデータを活用するのが効率的です。

ステップ2: 顧客単価アップの施策を立案・実行

現状を把握できたら、次はいよいよ単価アップのための具体的な施策を考え、実行に移します。

難しく考える必要はありません。以下のような施策から、あなたのサロンに合うものを取り入れてみましょう。

  • 高単価メニューの作成:通常のカラーやパーマに、特別なトリートメントやケアを加えた「プレミアムコース」など、付加価値の高いメニューを作る。
  • アップセルの徹底:カウンセリング時に「こちらのオプションを追加すると、さらに〇〇な効果が期待できますよ」と、お客様一人ひとりに合わせた提案を行う。
  • クロスセルの導入:施術後、「今日使ったこのシャンプーをご自宅でも使うと、サラサラ感が1ヶ月続きますよ」と、ホームケア商品を提案する。
  • 松竹梅の法則の活用:メニューを3つの価格帯(例:8,000円、12,000円、16,000円)で用意すると、真ん中の12,000円のメニューが最も選ばれやすくなり、結果的に客単価が向上します。

ステップ3: リピート率向上のための仕組み作り

顧客単価の改善とリピート率の向上は、密接に関係しています。お客様に「また来たい!」と思ってもらうための仕組みを作りましょう。

コラム:お客様がリピートしない最大の理由

お客様が再来店しない理由の多くは、「サービスに不満があったから」ではありません。実は「お店のことを忘れてしまったから」が圧倒的に多いのです。

これを防ぐには、お客様との接点を定期的に持ち、あなたのサロンを思い出してもらうきっかけを作ることが非常に重要になります。

以下の施策で、お客様との関係性を継続させることが大切です。

  • 次回予約の徹底:お会計の際に「次は1ヶ月後くらいがおすすめですが、ご予定いかがですか?」とその場で次の予約を促します。次回予約特典(5%オフなど)を用意すると、さらに効果的です。
  • LINE公式アカウントの活用お客様と直接繋がれるLINEは、リピート促進に最適なツールです。キャンペーン情報や季節の美容豆知識などを配信し、接触頻度を保ちましょう。
  • サンキューレター:来店後に感謝の気持ちを伝える手書きのハガキを送るなど、デジタルにはない温かみのあるコミュニケーションも心に響きます。

改善の順番まとめ:サロン経営を安定させる正しいステップ

これまで解説してきた内容をまとめます。サロン経営を長期的に安定させ、成長させていくためには、改善の順番が何よりも重要です。

闇雲に新規集客に走る前に、まずは足元を固めることから始めましょう。

  1. 【守り】顧客単価・リピート率の改善:既存顧客との関係を強化し、利益が出やすい体質を作る。
  2. 【維持】来店頻度の向上:お客様があなたのサロンを定期的に利用する「習慣」を作る。
  3. 【攻め】新規顧客の獲得:安定した経営基盤の上で、広告費などを効果的に使い、新しいお客様を呼び込む。

この「守り→維持→攻め」の順番を意識して改善を進めることが、あなたのサロンを繁盛店へと導く、最も確実で効率的な道筋です。

ぜひ、今日からあなたのお店の「顧客単価」を見直してみてください。

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本岡 直樹
出身:兵庫県 生年月日:1989年10月29日 【経歴】 ・学生時代に起業 ・イベント、サロン経営、アフィリエイト、コンテンツ販売 等を経験し、集客・マーケティングの重要性を痛感して、集客支援をスタート。
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